NPO法人日本不妊カウンセリング学会は、最適な不妊治療選択の研究・実践することができるよう研究・実践を行っています。


公開講座レポート

2015年12月12日、新潟で「将来子どもが欲しいあなたへ」と題する公開講座が、本会の助成のもと開かれました。

『将来子どもが欲しいあなたへ』

日本不妊カウンセリング学会 承認補助事業
新潟大学大学院保険学研究科GSH研究実践センター 主催

  • プログラム
  • 13:00 開会のあいさつ
    13:10 基調講演
    「未来の妊娠に備えた健康な身体づくり」
    新潟大学男女共同参画推進室 林はるみ 准教授
    日本不妊カウンセリング学会-不妊カウンセラー(1999年度認定)
    13:40 特別講演
    「不妊状況にある男女の特性を配慮した医療のあり方」
    日本不妊カウンセリング学会 理事 佐藤孝道 医師
    14:30 質疑応答・ディスカッション
    14:55 閉会の挨拶
  • 内容
  •  2015年12月12日(土曜日)、午後1時から3時まで新潟大学医学部大学院保健学研究科GSH研究実践センター(GSHというのはGender Sensitive/Specific Health:性差を踏まえた/尊重した保健、医療という意味です、センター長:青木萩子(教授)が主催する公開講座「将来子どもが欲しいあなたへ」が新潟大学医学部保健学科の講義室で開催されました。この講演会は本学会から開催支援のための助成金を得て開催されています。ここでは、記者の目から見た開催の様子を報告します。


     新潟大学医学部保健学科は、新潟駅から車で15分ほど離れた場所にあって、どちらかというとむしろ日本海に近く、交通の便はよいとは言えない印象を持ちましたが、開会の午後1時に、会場はかなりの数で埋まるぐらい盛況でした。参加者数は94名に達しました。


     進行は、池上雅臣教授の司会のもとに進められ、開会の挨拶の後、新潟大学男女共同参画推進室 林はるみさんがまず「未来に備えた健康な身体づくり」について話をされました。林はるみさんは、新潟大学経営戦略本部男女参画推進室准教授で、かつ本学会の認定不妊カウンセラー(1999年度認定)です。林はるみさんは「精子・卵子に活力を与え、妊娠を維持しやすい」身体づくりが重要で、未来の妊娠に備えるために、どのような生活を送ればよいのかを考えてみたいと、話をはじめられました。不妊の原因として、晩婚化・晩産化をあげ、37歳、38歳から急速に妊娠率が下がり,それとは逆に流産率が増加することをまず報告されました。また性感染症を予防することの重要性から、コンドームを使うことの重要性が示されました。さらに、現代の偏った食事、IT、夜更かし、運動不足、極度のストレスも、妊娠力にはネガティブに働くことを指摘、妊娠しやすいからだにするためには、生活習慣を下記のような健康的なものにみなおすことが重要と話をされました。

    • 規則正しい生活
    • 十分な睡眠。朝日を浴びる目ざめ。
    • ブルーライトの影響の予防(寝る2時間前には、PC・スマホは見ない)
    • 正しい食生活(ビタミン・ミネラル、不飽和脂肪酸のオメガ3、亜鉛・鉄分をとる)
    • 適度な運動
    • 無理なダイエットはしない

     続いて特別講演として日本不妊カウンセリング学会理事の佐藤孝道さんが「不妊治療―なかなか結果が出ないのはどうして -医学的視点から」を話されました。最初に、不妊治療には、妊娠率、累積妊娠率、生児獲得率など色々な「確率」が出てきますが、納得のいく不妊治療を受けるためには、医師や不妊カウンセラーによく聞いて、その意味を正しく理解することが重要と話されました。数字には必ず分母と分子があるので、それぞれが何か理解する必要もあります。また、医師はしばしば一般論で話しますが、自身のことであるか(例えば自分が40歳なら、40歳に絞った話なのか、それともそのクリニックの一般的な数値なのか)を確認する必要も指摘されました。


     そして不妊原因として卵管因子、排卵因子、子宮内膜症、男性因子などをあげられました。なかでも「高年齢」と「性交回数が少ない」のが問題であると指摘されました。年齢の要因は女性では20歳台が出産には最適。育児も子どもと一緒にがんばって試行錯誤しながら育てる、そこから親も成長するのが大切で,その意味からも出産も育児も20歳台が最適であると強調されました。もちろん男性も年齢の影響をうけ、受精の年齢にプラス5歳ぐらいで、女性と同じ程度の年齢の影響が出るとの話をされました。そして人生にはやはり取り返しがつかないこともある、妊娠、出産や育児もその一つで、人生にも「消費期限」あることを理解して欲しいと話されました。


     さらに世界の中で日本は飛び抜けて「性交回数」が少ないこと、その性交回数が少ないことがもう一つの不妊の要因であることを指摘されました。性交回数が少ないことは決して自慢できることではなく、その背景には中高生に行われる「妊娠は怖いものだ」「避妊こそ大切」「性病は怖い病気」という「否定的」性教育に原因があるのではないかと指摘されました。「セックス」はもっと楽しいもので、性行為でオキシトシンが分泌され,オキシトシンは相手に対する関心を高める作用もある、「セックス」を通した会話は間違いなく夫婦間のコミュニケーションをより深いものにするし、普段から性行為があればEDにも,セックスレスにもなりにくい。性交回数が少なくなれば(禁欲期間が長くなれば)、精子DNAの断片化が進み妊娠しにくくなるだけではなく、自然流産も増加することが示されました。セックスの回数を増やすこと、それは夫婦の会話の促進力となり、妊娠への早道でもあることを強調されました。


     新潟で開催された公開講座は,たくさんの出席者があり、参加者にとっても有意義なものとなりました。

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